« 昭和記念公園駅伝 | メイン | 蟻のごちそう »
2008年11月13日
池上永一
池上くんに最初に会ったのは10年くらい前だったと思います。友人の編集者を通してでしたが、作家という人種に会ったのは初めてでした。とても繊細な印象でしたが、回りにいる物作り系の人間とどこか通じる空気があって身近に感じた事を憶えています。
彼をとりまくエピソードはあまりに多く、ここでは記しませんが、私が知っている人間の中でもかなり特異な存在です。その後何度もお会いしましたが、思えば私が会っていた頃が池上くんにとっては一番きつい時期だったと思います。
沖縄石垣島出身の彼は早稲田大学在学中に「マガージマヌパナス」で日本ファンタジーノベルズ大賞を受賞、続く「風車祭」(カジマヤー)で直木賞候補になりました。私がお会いしたのはちょうどこの頃でその後も意欲的に出版をするのですが、いつも書評家には注目される存在でありながら販売数は伸びなかったようです。
ファンタジー小説という分野は初めてでしたが私は処女作を読んですぐに池上永一の大ファンになりました。いつも読んでいるノワールなどとはおよそ世界の反対側にあるような小説ですが、文章と言う媒体を通して伝わる濃密な物語世界はズシリとした本物感にあふれています。友人の編集者も「今まで担当した作家の中で一番の才能」と太鼓判を押すほど。ただ、生活がとても苦しそうでしたから、余計なお世話で知り合いの沖縄料理店にポスターを貼ってもらおうか、と進言したことがあります。これに対して彼は「もっとメジャーで行きたい」と言っていたことをよく憶えています。性格の優しい人なので私に遠慮しながらの言葉だったと思いますが、彼の才能を信じるなら逆に失礼な言葉だったかも知れないと後で思いました。

数年前に出版社が文春から角川に変わり、その才能にスポットが当たり始めました。現在は角川の秘蔵っ子のようです。
前作「シャングリラ」でこのミス3位。かなり読者層を広げたのではないでしょうか?
新作「テンペスト」は素晴しい出来です。帯の言葉をそのまま記しますね。
「主人公の人生を共にする悦楽。ゆったりとした構築力はすでにして文豪の風格だ」(筒井康隆)
「読み始めるともう絶対にやめられないのである。圧倒的にリアルで迫力満点なのだ。いやはや、すごい」(北上次郎)
池上ワールドは強烈です。私は最初に処女作「マガージマヌパナス」をお勧めしています。次読む小説を探している方、騙されたと思って試してみてはいかがですか?
投稿者 mars_ohsawa : 2008年11月13日 12:03